特定技能は「5年で終わり」ではない ― 2号を見据えた人材計画

特定技能は「5年で終わり」ではない ― 2号を見据えた人材計画

特定技能は「5年で終わり」ではない ― 2号を見据えた人材計画

2026年10月8日 · @多田曜識

特定技能1号は「通算5年まで」の在留資格です。ただし、採用した日から2号への道筋を計画しておけば、その先も長く働いてもらえます。鍵になるのは、「遅くとも3年目までに役職を任せること」と「日本語の学習を早めに始めること」です。特定技能外国人を雇用している、またはこれから採用する企業の経営者・人事の方に向けて、公表データと運用要領をもとに整理します。

始まって7年、いまあらためて特定技能を考える理由

特定技能制度は平成31年4月に始まり、令和8年3月末時点で約40万人(1号)が日本各地で働いています。受け入れている会社は、令和6年12月末時点で約5万にのぼります。

始まって7年がたち、特定技能はすっかり定着した制度に見えます。ただ、この7年で対象の範囲が広がり、制度を取り巻く状況も変わってきました。

  • 対象は19分野に広がりました(令和8年1月。新しく加わった分野には、受入れ開始が「準備が整い次第」のものもあります)。
  • 「上限なく更新できる」2号の対象は11分野になりました。
  • 令和9年4月には、技能実習に代わる「育成就労」が始まります。

制度が始まったころは、採用できるかどうかが関心事でした。いま問われているのは、採用した人に5年後も働いてもらえるかどうかです。

初期に来た人の多くは、日本を離れています

出入国在留管理庁は、令和2年に初めて1号を許可された14,366人が、令和8年1月時点でどうしているかを公表しています。

令和8年1月23日時点の状況人数割合
出国等9,328人64.9%
その他の在留資格(介護、家族滞在など)2,431人16.9%
特定技能2号2,056人14.3%
特定技能1号のまま463人3.2%
不法残留88人0.6%

(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」令和8年7月更新 p.25、速報値)

2号に進んだのは7人に1人ほどです。ただし「出国等」には、一度帰国して別の在留資格で来日した人も含まれています。帰国の理由は公表されていないため、この数字だけで「制度が失敗した」とは言えません。

では、なぜ2号に進んだ人はこれほど少なかったのでしょうか。

なぜ2号に進んだ人は少なかったのか

移行しなかった理由を本人や会社に尋ねた公式の調査はありません。ただ、制度の歩みと要件を見ると、次のような要因が考えられます。

1. 2号への道が開いたのが遅かった 2号が初めて許可されたのは令和4年4月です。対象が11分野に広がったのは令和5年6月です。令和2年に来た人の多くにとって、2号の道が見えたのは在留3〜4年目でした。そこから、分野によっては2年程度必要な「管理的な立場での経験」と試験合格を間に合わせるのは、難しかったはずです。

2. 試験と実務経験のハードルが高い 試験の累計(令和7年12月末まで)を比べると、差ははっきりしています。

受験者合格者合格率
1号の試験841,257人596,562人約71%
2号の試験53,099人23,205人約44%

(出典:制度概要 p.24。合格率は受験者数と合格者数から計算したもので、再受験者も含みます)

さらに外食業・飲食料品製造業・建設などでは、班長や副店長などとして他の従業員を指導した経験が必要です。これは本人の努力だけでは積めず、会社が役職を与えなければ満たせません。

3. そもそも2号がない分野がある 介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業などには2号がありません。介護分野だけで1号は約7万5千人(令和8年3月末)います。介護の人は、介護福祉士を取って在留資格「介護」に移るのが長く働く道です。

4. 「5年で区切る」ことが前提だった 1号は家族を呼べず、通算5年の上限がある在留資格です。本人も会社も「5年働いて帰る」ことを想定していた例が多かったと考えられます。

当時と今では、前提が違います

これらの要因のうち、「道が開いていなかった」という点は、すでに解消されつつあります。2号の在留者は令和7年12月末の7,955人から、令和8年3月末の12,420人へ、3か月で約1.6倍に増えています。

制度開始のころ今(令和8年)
2号の対象ごく一部の分野11分野(外食、飲食料品製造、建設、農業など)
2号の在留者0人12,420人(令和8年3月末)
5年で間に合わないとき帰国するしかない一定の要件で「通算6年」まで在留できる(令和7年9月〜)

2号になれば、在留期間の更新に回数の上限がなく、要件を満たせば配偶者と子どもを呼ぶこともできます。会社にとっても、育てた人材が現場のリーダーとして残ってくれることになります。

さらに令和9年4月からは、2号には「日本語教育の参照枠」B1相当以上の日本語力が求められる予定です。文化審議会の報告では、1号の水準(A2)からB1までには、集中的に学んでも150〜220時間程度かかるとされています。働きながらなら、1年半〜2年は見ておくのが現実的です。日本語の学習も、役職と同じく早い段階から計画に入れておく必要があります。

2号になるには「試験」と「管理的な立場での経験」が必要です

先ほど触れたとおり、2号は1号を続ければ自動的になれるものではありません。ここでは、当事務所で要件を確認できた4分野を示します。いずれも、試験の合格に加えて他の従業員を指導する立場での経験や現場での経験が求められます。

分野試験必要な実務経験日本語
外食業外食業の2号試験飲食店等で、副店長・サブマネージャー等として複数の従業員を指導・監督した経験(現行の運用要領で2年)B1相当以上(現在はN3で確認)
飲食料品製造業飲食料品製造業(または水産加工業)の2号試験ライン長・班長等の「工程を管理する者」として2年以上B1相当以上(現在はN3で確認)
建設建設の2号試験、技能検定1級など班長としての実務経験(建設キャリアアップシステムの就業日数で確認)B1相当以上(令和9年4月からの予定)
農業農業の2号試験職長として指導しながら工程を管理した経験、または農業の現場での経験(必要な年数は運用要領で確認)B1相当以上(令和9年4月からの予定)

(出典:各分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)及び分野別運用要領。日本語のB1相当は令和9年4月から省令施行予定で、それまでの扱いや試験名の経過措置は分野ごとに異なります。その他の分野は個別にご確認ください)

2号になった後の仕事にも決まりがあります。1号と同じ仕事ではなく、指導や管理の仕事、または自らの判断で行う専門的な仕事をしていることが必要です。あわせて、分野ごとに決められた人数以上を指導していることも求められます。

5年から逆算すると、「3年目」が分かれ目です

管理的な立場での実務経験が2年必要な分野では、その2年を通算5年の中に収めなければなりません。試験の日程や結果待ちも考えると、遅くとも3年目の初めには役職に就いている必要があります。

[embed: node/71b1bb4a-d42e]

この図は、要件から逆算した目安です。「3年目」という法令上の決まりがあるわけではありません。建設は建設キャリアアップシステムの就業日数、農業は現場での経験でも要件を満たせるなど、分野によって当てはまり方が違います。

大切なのは、本人の努力だけでは2号に届かないことです。役職を与えるのも、経験を証明するのも会社です。外食業と飲食料品製造業では、採用前に「キャリアアップ計画」を書面で説明することが義務になっており、本人から求められたら実務経験を証明する書面を交付しなければなりません。

💬 社内・役員への説明ポイント(そのまま使えるトーク例) 「特定技能2号になれば、更新の上限なく長く働いてもらえます。ただし、試験に加えて「人を指導した経験」が必要で、それは会社が役職を任せないと積めません。通算5年から逆算すると、3年目には班長などを任せる計画が必要です」

間に合わないときの安全網と、会社が先に確かめておくこと

安全網:「6年特例」 2号の試験に不合格でも、必要なすべての試験で合格基準点の8割以上を取っていれば、1号の通算期間が6年になる場合があります(令和7年9月30日から)。本人が合格に向けて受験を続けることや、会社に指導体制があることなども条件です。ただしこれは「延長」ではなく、2号への橋渡しという位置づけです。4年目のうちに一度受験しておくと、この安全網を使える可能性が残ります。

会社が先に確かめておくこと

  • 2号の役割を置けるか:2号になるまでには部下を指導する経験が必要で(外食業なら2名以上の指導・監督)、2号になった後も指導する相手がいることが前提です。小さな事業所では、先に体制を確かめます。
  • 役職を書面で任命する:辞令や職務命令書が、後で実務経験を証明する資料になります。
  • 給料と役職を結びつける:昇給の見通しを示すことが定着につながります。建設では、技能の習熟に応じた昇給を契約に書くことが義務です。
  • 転職者は残り期間を確認する:前の会社で働いた期間も合算されます。残りが短いと、2号の実務経験が間に合いません。
  • 2号になった後の変化を見越す:会社の支援義務がなくなり、本人は要件を満たせば家族を呼べるようになります。住まいなども含めて考えておきます。
  • 日本語の学習を支える:B1までは働きながらで1年半〜2年が目安です。1号のうちは日本語学習の機会の提供が義務的支援なので、2号を目標にした学習計画として使えます。試験合格への手当なども効果的です。

まとめ

  • 現状:令和2年に1号になった人のうち、2号に進んだのは約7人に1人。ただし、当時は2号への道が十分に開いていませんでした。
  • 前提の変化:2号は11分野に広がり、在留者も急増中。試験が惜しくも届かない人には「6年特例」もできました。
  • 要件:試験に加えて、多くの分野で「他の従業員を指導する立場での経験」とB1相当の日本語が必要。
  • 逆算:通算5年に収めるには、遅くとも3年目の初めには役職を任せ、日本語の学習も始めておく。

2号の対象が広がった今、特定技能は「5年で区切る」だけでなく、「育てて長く働いてもらう」使い方ができるようになっています。令和9年4月に育成就労が始まれば、「育成就労→特定技能1号→2号」という長い道のりを、一つの会社で歩む人も増えていくはずです。ただし、その道は採用した日から準備しておかないと、通算5年の中に収まりません。

2号を見据えた受入れのご相談は当事務所へ

当事務所は、入管業務を専門とする申請取次行政書士の事務所です。足立区を拠点に、特定技能をはじめとする在留資格の申請取次と、受入れ要件の確認を行っています。このブログのように、法令や運用要領、政府の公表データに当たり、制度の「なぜ」までご説明することを大切にしています。

  • 自社が特定技能の受入れ要件を満たしているか確かめたい
  • 2号の要件から逆算して、役職や日本語学習の計画を立てたい
  • 2号への在留資格変更や、「6年特例」の手続を相談したい

生活支援については、必要に応じて登録支援機関とも連携します。まずはお気軽にご相談ください。

参考資料(いずれも出入国在留管理庁など)

  • 外国人労働者に関する制度概要(令和8年7月1日更新)
  • 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年8月20日改正)
  • 各分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)
  • 分野別運用要領:外食業(令和7年5月30日改正)、飲食料品製造業(令和8年8月28日改正)、建設(令和7年1月31日改正)、農業(令和7年6月6日改正)
  • 文化審議会国語分科会「地域における日本語教育の在り方について(報告)」(令和4年11月):レベルごとの学習時間の目安

※本記事は上記資料の時点の内容です。最新の情報は出入国在留管理庁のホームページでご確認ください。

関連記事:飲食店の外国人店長・副店長を次の更新で失わないために — 会社が今できる特定技能2号への備え

この記事を書いた人 Wrote this article

tadaoffice

tadaoffice

行政書士の多田曜識と申します。 東京都足立区で入管業務専門の行政書士事務所を運営しております。