在留手数料はなぜ上がったのか ― 経営者のための考え方と計算式

在留手数料はなぜ上がったのか ― 経営者のための考え方と計算式

令和8年10月1日から、在留資格の変更・更新の手数料は、「審査の手間賃(約1万円)」に「日本にいられる年数分の負担(1年約2万円が目安)」を足した額になりました。この資料では、その考え方と計算式を、政府の説明と国会での議論に沿って整理します。

1. 何がいくらになったか

以前は、在留資格の変更・更新は一律6,000円(窓口申請、オンライン申請は5,500円)でした。改定後は、許可される在留期間の長さで額が変わります。

許可される在留期間窓口申請オンライン申請
3月以下10,000円10,000円
3月超6月以下18,000円15,000円
6月超1年未満25,000円21,000円
1年33,000円27,000円
1年超3年未満48,000円42,000円
3年以上5年未満64,000円56,000円
5年以上75,000円65,000円
永住許可200,000円―

特定技能1号の在留期間は、3年以内で入管が1人ごとに決めます。そのため、同じ社員でも更新のたびに手数料が変わることがあります。

2. 手数料は2つの部分でできている

以前の手数料は、審査にかかる費用(実費)を中心に決められていました。今回はそこに、「応益」と呼ばれる部分が上乗せされました。

部分中身額
実費審査する職員の人件費(約6,300円)と、システム費・事務費(約3,300円)変更・更新は約1万円、永住は約2万円
応益日本に在留できることで受ける利益に応じた負担1年あたり約2万円が目安(長いほど割引)

「応益」をたとえると

  • 役所の証明書の発行手数料は、作る手間で値段が決まります。これが「実費」の考え方です。
  • 駐車場の料金は、何時間停められるかで値段が決まります。これが「応益」の考え方です。

今回の在留手数料は、この2つを足したものです。そのため、長く在留できる許可ほど手数料が高くなります。

法務大臣は、額の決め方を次のように説明しています(令和8年7月3日の記者会見)。

「審査に要する実費のほか、外国人の出入国及び在留の公正な管理に要する費用の額等を勘案して引き上げることとしたものです。」

3. 「1年約2万円」の根拠

応益分の単価「1年約2万円」は、外国人のための行政にかかる費用を、更新などの手続をする外国人の数で割って出しています。

内容
A 外国人の出入国・在留の公正な管理にかかる費用年約572億円
B 更新などの手続をする外国人(永住者・特別永住者を除く中長期在留者)約291万人
A ÷ B1人あたり年約2万円

572億円の中身(令和8年5月の参議院法務委員会での政府答弁)

  • 令和7年度補正予算と令和8年度当初予算から、外国人が直接、利益を受けていると評価できる経費を集めたものです。
  • 主な内訳は、出入国在留管理庁の予算から約377億円、政府の外国人政策(総合的対応策)の予算から約172億円です。
  • 日本人や観光客のための施策、人件費などは除いたとされています。
  • 対象には、手続のオンライン化、在留支援、不法滞在対策などが含まれます。

つまり政府の考えは、「外国人のための行政の費用を、その利益を受ける在留外国人に分担してもらう」というものです。マンションの管理費を住人で割るのに近い考え方です。

4. 計算式:在留期間ごとの内訳

基本の式は次のとおりです。

手数料 = 実費(約1万円)+ 応益分(2万円×年数を割り引いた額)± 窓口・オンラインの差

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点線の枠は「2万円×年数」をそのまま足した場合の額です。1年は割引がなく、5年以上では応益分が40%引き、永住は約33%引きになっています。

入管庁が式を示している区分

区分計算窓口オンライン
5年以上実費1万円+応益6万円(2万円×5年=10万円を優遇措置として減額)±5千円7.5万円6.5万円
永住実費2万円+応益18万円(永住後の平均在留年数約13.5年をもとに、5年の場合の3倍)20万円―

※永住の「平均在留年数約13.5年」は、国会答弁で示された数字です。ただし、何を対象に、どのような方法で計算した平均なのかは示されていません。

その他の区分(公表額からの逆算)

入管庁は、在留期間が長いほど応益分の増え方を緩やかにするとだけ説明しています。下の表は、窓口とオンラインの中間額から実費1万円を引いて、当事務所が逆算したものです。

許可される在留期間窓口/オンライン逆算した応益分
3月以下1万円/1万円なし(実費だけ)
3月超6月以下1.8万円/1.5万円約0.65万円
6月超1年未満2.5万円/2.1万円約1.3万円
1年3.3万円/2.7万円2万円(2万円×1年そのまま)
1年超3年未満4.8万円/4.2万円約3.5万円
3年以上5年未満6.4万円/5.6万円約5万円
5年以上7.5万円/6.5万円6万円

読み取れること

  • 1年の許可は、ちょうど「実費1万円+2万円×1年」です。
  • 3年では「2万円×年数」の約8割、5年では6割に割り引かれています。1年あたりに直すと、長い許可ほど割安です。
  • 法務大臣は、この割引を「在留状況の良好性等を考慮した優遇措置」と説明しています。長い在留期間が許可されるのは在留状況が良い人だから、という理屈です。
  • 3月以下は実費だけで、窓口とオンラインの差もありません。

5. 手数料は何に使われ、どう返ってくるのか

政府は、手数料に上乗せした部分の根拠となる施策として、次のものを挙げています(積算資料(案)、令和8年5月の参議院法務委員会・行政監視委員会での政府答弁)。それぞれが外国人本人と企業にどう関係するかを整理しました。

施策外国人本人にとって企業にとって
手続のデジタル化(出入国在留管理行政のDXの推進)オンラインで申請でき、窓口に出向く時間や交通費が減ります更新のたびに社員を休ませたり、担当者が付き添ったりする負担が減ります。審査の効率化で結果が早く出ることも期待できます
審査・在留管理の体制強化(職員の増員など)審査を待つ期間が短くなることが期待できます採用した人の就労開始や、更新の見通しが立てやすくなります
相談窓口と情報発信の強化(自治体の一元的相談窓口への交付金など)生活や手続の困りごとを、自治体の窓口で相談できます社員の生活上の相談を会社だけで抱え込まず、公的な窓口につなげられます
日本語や日本の制度・ルールを学ぶプログラム(創設を検討中)日本語や生活のルールを学ぶ機会が増えます職場での意思疎通がしやすくなります。2号への移行で日本語試験が必要な分野では、その準備にも役立ちます
不法滞在・不法就労の対策(不法滞在者ゼロプランの推進)ルールを守って暮らす外国人と、違法な状態の人とがはっきり区別されます不法就労で人件費を抑える事業者が減り、きちんと受け入れている会社が不利になりにくくなります
難民等の保護・支援難民などが対象で、就労目的で在留する人への直接の効果は限られます直接の効果は限られます

※表の右2列は、政府が示した施策の内容をもとに当事務所が整理したものです。多くの施策は拡充中または検討中で、効果が出る時期や程度は示されていません。

使われ方を確かめるには

集めた手数料は国の一般の収入に入り、法律で使い道は決められていません。そのかわり政府は、予算措置の状況を法務省のホームページで公表すると答弁しています(令和8年5月28日、参議院法務委員会)。会社としては、ここで施策の進み具合を確かめることができます。

6. 会社としてできること

手数料の額そのものは変えられません。それでも、負担を抑え、予測しやすくすることはできます。

  • オンライン申請を使う:窓口より安くなります(1年の許可で6,000円、5年以上で10,000円の差)。納付はコンビニ決済か銀行決済で、別に決済手数料がかかります。
  • 在留期間ごとの額で予算を組む:特定技能1号なら、1回の更新で約3万〜6万円台が目安です。在籍人数と更新の時期から、年間の費用を見積もっておきます。
  • 誰が払うかを決めておく:会社負担か本人負担かを、雇用条件や社内規程ではっきりさせておくと、あとのトラブルを防げます。
  • 長い在留期間が許可されるようにする:1年あたりの負担は、長い許可ほど軽くなります。届出、納税、社会保険などをきちんと整えておくことが、審査での評価にもつながります。
  • 減額・免除の対象になるか確かめる:経済的な事情などで手数料が減額・免除される仕組みがあります。対象は政令と入管庁のガイドラインで定められているので、該当しそうな場合は確認します。

当事務所では、更新の時期と費用の見通しの整理や、オンライン申請を含む申請の取次をお手伝いしています。お気軽にご相談ください。

出典

※逆算した応益分の表は、公表額をもとに当事務所が計算したもので、入管庁が公表した式ではありません。本資料は令和8年10月時点の内容です。

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tadaoffice

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行政書士の多田曜識と申します。 東京都足立区で入管業務専門の行政書士事務所を運営しております。