飲食店の外国人店長・副店長を次の更新で失わないために ― 特定技能2号への備え

【経営者・人事責任者の皆様へ】技人国で働く店長・副店長の更新に不安があるとき、会社として何を準備できるか。外食業の特定技能2号を軸に整理します。
この記事のポイント
- 飲食店の技人国で認められるのは、店舗経営と、条件付きの店舗管理だけです。自分で調理や接客をしていれば、店長でも当てはまりません。
- これまで許可されていても、次の更新で許可されるとは限りません。何も準備しないと、更新の見通しが立たない社員は、他社や他分野へ移る可能性があります。
- 外食業の特定技能1号は新規受入れが止まっていますが、2号は停止の対象外です。店長・副店長クラスなら、会社の支援で2号を目指せる可能性があります。
- 会社に必要なのは、役職の辞令、勤務の記録、実務経験証明書、協議会への加入、キャリアアッププランの書面です。
- すぐに2号へ変更しなくても、試験に合格しておけば、更新が難しくなったときの備えになります。
1. はじめに
飲食店に「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)の社員がいる会社は、次の更新に向けて、今から準備を始めることをおすすめします。
出入国在留管理庁は、技人国のガイドライン「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」を2026年4月に改定したとされています。政府が2026年1月に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」でも、制度の適正化が打ち出されました。一方で、入管庁の現行の資料でも、飲食店の店舗管理業務は「個別に判断」とされています。
そして、外食業の特定技能1号は、2026年4月13日から新規受入れが原則として停止されています。技人国が難しくなったとき、社員が飲食店で働き続けるための受け皿は、狭まっています。
この記事では、会社の立場から、次の3つを順に説明します。
- 飲食店の技人国で認められる仕事の範囲と、現場で陥りやすい落とし穴
- 何も手を打たないと、会社に何が起きるか
- 店長・副店長クラスの社員について、会社が支援できる特定技能2号への道
私は行政書士になる前、長く飲食店の店長をしていました。ピークの時間にホールにも厨房にも入らない店長がほとんどいないことは、身をもって知っています。だからこそ、現場の実態と入管の基準のズレがどこにあるのかを、正直にお伝えしたいと思います。
2. 飲食店で技人国ができる仕事・できない仕事
入管庁の資料では、技人国で認められるのは店舗経営の業務と、条件付きの店舗管理業務だけです。調理と接客は認められていません。
| 業務 | 具体例 | 技人国 |
|---|---|---|
| 調理業務 | 仕込み、調理、盛付け | × |
| 接客業務 | 席への案内、注文、配膳、片付け、会計 | × |
| 店舗管理業務 | 衛生管理、従業員の管理・指導、会計事務、社内外との連絡調整、在庫管理 | △ |
| 店舗経営 | 経営分析、経営管理、契約に関する事務 | ○ |
出典:飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について(出入国在留管理庁)
店舗管理業務の「△」には、注記があります。
- 認められるかどうかは、店舗の具体的な態様や、本人の活動内容・キャリアパス全体を総合的に見て、個別に判断される
- 自ら調理業務・接客業務に従事することは認められない
肩書きが店長や管理職でも、自分で調理や接客をしていれば、技人国の活動とは認められないということです。
入社当初の「実務研修」は例外です。ただし条件があります。日本人の大卒社員も同じ研修を受けていて、技人国で働く期間全体の大半を占めない場合に限り、飲食店での接客なども認められます。採用から1年を超えて研修を続ける場合は、研修計画の提出を求められます。研修が外国人社員だけに設定されていたり、日本人社員と内容が違ったりする場合は、日本語研修など合理的な理由がない限り認められません(ガイドライン別紙1)。
3. 現場でよくある3つの落とし穴
大手チェーンでよく見る「統括リーダー」「時間帯責任者」のような働き方は、仕事の中身だけ見ると店舗管理に近く見えます。それでも、次の3点に当てはまると、会社として説明するのがかなり難しくなります。
1. ピークの時間にポジションに入っている
忙しい時間に自分も調理や接客に入っていれば、注記の「自ら従事しない」を満たしません。シフト表で、ポジションの人数に数えられていないかを確認される可能性があります。
2. アルバイト・パートも同じ役割をしている
ガイドラインは、採用基準が「未経験可」のような業務や、学歴・実務経験の要件を満たさない日本人従業員が一般的に担っている業務は、対象にならないとしています。同じ統括リーダーの役割をアルバイトも担当していれば、これに当てはまると見られやすくなります。
3. 担当の日以外は現場スタッフとして働いている
1店舗に責任者が複数いてシフトで交代している場合、責任者でない時間は調理や接客をしているのでは、と疑われます。「厨房にはいるが、指導しているだけ」という場合も注意が必要です。手本を見せたり、忙しい時に一緒に盛り付けたりした時点で、調理への従事になります。
4. 「これまで許可されてきた」は安心材料にならない
「うちの会社ではずっとこの働き方で許可が出ている」という会社も多いと思います。ただ、それが次の更新でも通る保証にはなりません。
- 大企業は提出書類が簡素:上場企業などは提出書類が少ないため、職務の実態が審査で表に出にくかった面があります。許可されたことが、その働き方が技人国に当てはまると認められた証拠とは限りません。
- 基準が変わったのではなく「明確化」:ガイドラインは、申請者の予見可能性を高め、運用の明確化と透明性の向上を図るものとされています。そのため、今まで問題なく働いていても、「実は要件を満たしていなかった」ということが起こり得ます。
では、不許可が続出すれば救済措置が取られるのでは、と考える方もいるかもしれません。技人国は、基準を変えたのではなく、もともとの基準をはっきりさせた、という扱いです。救済のための経過措置を置く理屈は立ちにくいと考えられます。政府全体として外国人政策を適正化する流れにある今、救済を期待するのは危険です。
なお、入管がこの先、飲食店の技人国の勤務実態にどこまで踏み込むかは、誰にも分かりません。1年後に、結局何も変わらなかった、となる可能性もあります。だからこそ、「今すぐ動く」ことより、「いつでも動ける状態にしておく」ことが大切だと考えています。
5. 何も手を打たないと、会社に何が起きるか
更新の見通しが立たない社員は、更新が難しくなる前に、自分から動くことがあります。
- 転職される:技人国の社員は、技人国に当てはまる他社の仕事(本部職、通訳・翻訳、貿易、事務など)へ転職できます。転職後の届出で済みます。転職は本人の自由で、会社が止められるものではありません。なお、辞めたら違約金を払うといった定めは、労働基準法で禁止されています。
- 他分野へ移られる:宿泊や飲食料品製造業など、他分野の特定技能1号へ移る社員もいます。
- 帰国される:選択肢がなければ、帰国を選ぶ社員もいます。
会社にとって痛いのは、店長・副店長として育てた社員を失うことです。しかも、外食業の特定技能1号は新規受入れが止まっているため、海外からの新規採用や、留学生などからの切り替えで、同じように穴を埋めることは原則として難しくなっています。
もう一つ、見落としてはいけない点があります。技人国で認められない業務を恒常的にさせていると、会社が不法就労助長罪(入管法第73条の2。3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその併科)の責任を問われるおそれがあります。
6. 店長・副店長クラスなら、会社が支援できる道:特定技能2号(外食業)
外食業の特定技能1号は新規受入れが停止されていますが、農林水産省のQ&Aによると、この措置の対象は1号で、2号は対象外で、通常どおり審査されます。2号は1号を経なくても取得できるため、技人国の社員が今の会社に残ったまま、2号を目指せる可能性があります。
6-1. 社員本人に必要なもの
- 外食業特定技能2号の技能測定試験に合格していること
- 日本語能力試験N3以上に合格していること(合格証は、入管への申請までに必要です。試験は年2回、7月上旬と12月上旬です)
- 日本国内の飲食店で、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら、接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)として、2年間の実務経験があること
実務経験は、令和8年5月1日から、試験の前日までに2年が必要です。以前のように、試験後の見込みでは受験できません。
6-2. 技人国で働いた期間は「実務経験」に数えられるか
ここが一番の疑問点です。2号の実務経験には「接客を含む作業に従事」とある一方で、技人国では自ら接客業務に従事することは認められていません。
農林水産省のQ&A(令和8年8月作成版)は、実務経験の対象にならない例として、技能実習、留学生のアルバイト、家族滞在などを挙げています。技人国は、除外される例には挙げられていませんが、含まれるとも書かれていません。
そこで当事務所は、2026年10月に農林水産省(外食・食文化課)に電話で問い合わせました。回答は、次の2つを満たしていれば対象になる、というものでした。
- 売上管理や人材管理などの店舗管理を行っていること
- 接客などの現場業務は、付随的に行っていること
続けて地方出入国在留管理局にも確認したところ、農林水産省の判断のとおりで、入管がそれを覆すことは考えにくい、との電話担当者の回答でした。
言いかえると、技人国の範囲内で、管理業務を中心にきちんと働いてきた社員ほど、その期間を2号の経験として説明しやすいということです。
6-3. 会社が用意すること
2号は、本人の努力だけでは届きません。役職を与えるのも、経験を証明するのも、会社です。
| 会社がやること | 内容 |
|---|---|
| 食品産業特定技能協議会への加入 | 2号の外国人を受け入れる会社も、加入が必要です |
| 役職の辞令・職務命令書 | 副店長、サブマネージャー等の役職を、できるだけ書面で命じます。辞令がない場合は、管理者相当の手当を支払っていることが分かる給与明細などで、いつから指導の立場にあるかを示します |
| 実務経験証明書の作成 | 様式は試験の実施要領で確認します。複数の会社にまたがる場合は、現在の会社がまとめて提出します |
| キャリアアッププランの書面 | 2号の外国人にも、雇用契約の締結・更新の前に、書面で交付して説明する必要があります。様式は自由です |
| 報酬 | 同じ会社の日本人の店長・副店長と同等以上であることが必要です |
| 勤務記録の整理 | シフト表、勤務記録などで、店舗管理が中心だったことを説明できるようにします |
試験の申込みは、現時点では企業のマイページを通じた受付が案内されています(ただし、この案内は、すでに働いている1号の外国人を受験させる場合のものです。技人国の社員を受験させる場合の扱いは、農林水産省にご確認ください)。
6-4. 2号になると、会社と社員に何が変わるか
- 調理・接客・店舗管理を含む外食業の業務全般と、店舗経営に従事できます。「自分では調理や接客ができない」という、技人国の制約がなくなります。
- 在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば、配偶者や子どもを日本に呼び寄せることができます。
- 1号のような、会社の義務的支援(住居確保や定期面談など)はありません。登録支援機関への委託も不要です。
- 外食業の分野の中で会社を移る場合も、原則として在留資格の変更許可が必要になります(技人国なら届出で済みます)。許可が出るまで、新しい会社では働き始められません。社員の転職のハードルは、技人国より上がります。
なお、「特定技能は格落ち」「給料が下がる」という誤解が、社員の側にはあります。給料については、日本人と同等以上でなければならないと定められていますので、在留資格の変更をきっかけに下げるのは難しく、同じ給料のまま(できれば役職手当などでそれ以上)で切り替えるのが基本です。社員に、会社からこの点を先に説明してあげてください。
6-5. 注意点
- 電話での回答です:6-2の回答は、どちらも電話担当者のもので、個別の審査結果を約束するものではありません。申請の時点で、最新のQ&Aや運用を確認する必要があります。
- 接客が中心だった場合は難しい:接客が付随的な範囲を超えていれば、2号の経験として認められにくいだけでなく、その期間の働き方が技人国に当てはまっていなかったことを示すことにもなりかねません。
- 2号の経験を積ませるために、現場業務を増やしてはいけません:2号の実務経験には「接客を含む作業」とありますが、技人国の活動としては、現場業務は付随的な範囲にとどめる必要があります。ここは矛盾しやすいので、会社の判断で動かさず、専門家に相談してください。
- 2号の経験として認められても、技人国の更新が通るとは限りません:同じ働き方で技人国の更新も通るのかを入管に尋ねたところ、「その判断はまた別」との回答でした。2号の実務経験に当たるかと、技人国の活動に当てはまるかは、別々に判断されます。
- 日本語要件は変わる予定があります:令和9年4月から、特定技能2号の日本語要件が変わる分野があります。外食業分野の扱いは、受験の時期によって求められる水準が変わる可能性がありますので、最新の運用要領を確認してください。
7. 会社が今からできる準備
更新の1年前から動き始めるのが理想です。書類の書き方で乗り切る方法はありません。
- 仕事の実態を棚卸しする:一日の業務の割合、ポジションに入っているか、アルバイトとの違い、大学等での専攻と仕事の関係を、本人と会社の両方で確認します。今の働き方で説明できるかを、ここで見極めます。
- 2号を目指せる社員を見極める:売上管理や人材管理を中心に2年の経験がある(または積める)社員は、2号の候補です。2年がそろう日は、辞令の日付から数えて確認します。
- 日程を逆算する:実務経験は試験の前日までに2年が必要です。2年がそろったら、なるべく早い試験日を選びます。N3は年2回(7月上旬・12月上旬)なので、早めに受験できるよう、学習の時間を確保します。技人国の更新が先に来る場合は、その更新も乗り切る計画が必要です。
- 会社の側の手続きを始める:協議会への加入、キャリアアッププランの作成、辞令・職務命令書の整備を進めます。
- 配置換えを検討する(できる会社は少数):管理専任・本部・エリア担当などへ実際に異動できれば、技人国のまま残れる可能性があります。ただし、本部のポスト数や日本語力の問題で、実現できる会社は限られます。通訳・翻訳など、主に語学力を使う対人業務については、2026年4月15日の申請から、CEFR・B2相当の語学力を示す資料が求められています(日本語能力試験N2以上などで示せます。日本の大学等を卒業した人は、B2相当とみなされる場合があります)。
- 本人と話す:2号が「格落ち」ではないこと、家族を呼べること、会社として支援することを、早めに伝えます。
- 時間に余裕をもつ:更新申請は、在留期限の3か月前からできます。試験には時間がかかるので、期限ギリギリにならないようにします。
技人国の更新が不許可になってから準備を始めても、間に合いません。「何も起きなければそれでよし、起きても慌てない」状態を、今のうちにつくっておくことが大切です。
8. やってはいけないこと
- 実態と違う申請:実際は調理や接客をしているのに、申請書に「管理業務のみ」と書くことは、絶対にやめてください。入管は書類だけでなく、実地調査や追加資料の提出を求めることがあります。事実と違う申請をすると、在留資格の取消しの対象になり得るうえ、会社も不法就労助長の責任を問われるおそれがあります。
- 経歴の水増し:辞令の日付を実際より前にするなど、実務経験証明書に事実と違うことを書くことは、同じく許されません。
- 囲い込み:社員を引き止める目的で、違約金を定めたり、パスポートや在留カードを預かったりすることは、やってはいけません。社員が自分で選べる選択肢を示すことが、定着につながります。
実態に合った在留資格に移ることが、遠回りに見えても、長く働き続けてもらうための一番確実な道です。
9. まとめ:不安なら、更新の1年前にご相談ください
- 飲食店の技人国で認められるのは、店舗経営と、条件付きの店舗管理業務だけ。店長や責任者でも、自分で調理・接客をしていれば当てはまりません。
- 「これまで許可されてきた」は、次の更新の保証にならず、救済措置も期待しにくい。
- 何も準備しないと、社員は他社・他分野へ移ったり、帰国したりする可能性がある。外食業の特定技能1号の新規受入れは止まっていて、同じ形で穴を埋めにくい。
- 外食業の特定技能1号の停止措置は、2号を対象にしていません。管理業務中心の店長・副店長クラスなら、技人国から直接2号を目指せる可能性があります。すぐに変更しなくても、試験に合格して準備しておくことが保険になります。
- 2号には、会社の側の手続き(協議会への加入、辞令、実務経験証明書、キャリアアッププラン)が必要です。
多田曜識行政書士事務所は、足立区を拠点に入管業務を専門に扱っています。元飲食店長として、現場の働き方を踏まえたうえで、今の仕事が技人国に当てはまるかの確認から、特定技能2号を見据えた準備(実務経験の棚卸し、受験時期の計画、会社への説明や必要書類の整理)、在留資格の変更申請まで、一貫してサポートしています。
料金の目安(税別)
| メニュー | 内容 | 料金 |
|---|---|---|
| 2号準備診断 | 勤務実態のヒアリング、技人国に当てはまるかの確認、2号へのルート表(2年がそろう日、受験の予定、必要な書類) | 10,000円(申請もご依頼いただいた場合は、申請料金から全額差し引きます) |
| 準備から変更申請までのセット | 受験までの日程管理、辞令・実務経験証明書の文案作成、会社への説明、特定技能2号への変更申請 | 100,000円 |
入管に納める手数料(収入印紙)などの実費と、試験の受験料は別途かかります。技人国の更新申請や、会社向けの顧問契約など、そのほかの料金は料金ページをご覧ください。
参考資料
- 飲食店において外国人が就労する場合の在留資格について(出入国在留管理庁)
- 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(出入国在留管理庁)、別紙1、別紙4
- 技術・人文知識・国際業務(出入国在留管理庁)
- 外食業分野(出入国在留管理庁)
- 特定技能「外食業分野」における受入れ上限の運用について(農林水産省・出入国在留管理庁、令和8年3月27日)およびQ&A
- 食品産業分野(飲食料品製造業分野及び外食業分野)の特定技能2号に関するQ&A(農林水産省、令和8年8月作成版)
- 外食業特定技能測定試験実施要領(農林水産省)
- 外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(令和8年1月23日)
※本記事は2026年10月時点の公表資料に基づいています。最新の情報は、出入国在留管理庁と農林水産省のホームページでご確認ください。